彫金と手漉き和紙の伝統工芸にふれる
銅または真鍮板を使って複雑な模様が刻まれた飯山仏壇の金具。現在3名いる彫金師(伝統工芸士)のひとり、鷲森敏男さんが教える伝統技法を用いたアクセサリー制作は、貴金属店で販売されているものとは異なる自分だけのオリジナル品や一点ものが欲しい人に好評を得ています。今回は初心者向けの銅製ペンダント作りを体験しました。
- 1.型取り
今回は円形(ドーナツ型)のペンダントトップを作ります。0.4~1mmの厚さの銅板の上に見本の型枠を置き、鉛筆で型取りをします。銅は真鍮よりも柔らかいため初心者の彫金に向いています。
- 2.型抜き
切板(真鍮板)の上に型取りをした銅板を重ね、切断用のたがねを使って中心部を切り抜きます。回転させながら何回もたがねを打ち込むこむことで、切り落とすことができます。
- 3.切り取り
金切りハサミで外側を丸く切り落とします。硬いのでハサミの取り扱いに注意。多少いびつでも後々ヤスリで削るので問題ありません。
- 4.デザイン
自分好みの模様を鉛筆で描きます。初心者は複雑すぎない模様がおすすめです。
- 5.蹴彫の練習
先ほど切り落とした物や余っている銅板に鉛筆で数字を描き、彫刻用のたがねを使って模様を刻む「蹴彫(けりぼり)」の練習をしてから、円形の銅板に模様を刻みます。金槌で叩く強さを一定に保ち、細かくリズミカルに打ち進めるのがポイント。
- 6.ヤスリがけ
彫金が終わったら、銅板の外側と中心円の内側を棒ヤスリで丁寧に削ります。
- 7.曲げ加工
ケヤキやカリンなどの硬い木材でできた木台(癖付け台)の丸い型の上に銅板を置き、丸みを帯びるように金槌で叩きます。
- 8.メッキ前完成
銅板のペンダントトップが完成。このあとは、金メッキを施します。この工程は鷲森さんの専門職のため、参加者は一旦休憩。
- メッキ処理には時間がかかるため、この間、飯山市内の観光や昼食が楽しめます。金メッキを施したアクセサリーは本格的な味わいが増します。
- 9.留め具を装着
ヤットコ(プライヤー)という道具を使って、ヒモの両端にペンダントの留め金具を装着。
- 10.できあがり
約2時間半で、自分だけのオリジナルペンダントが完成。初回は簡単なアクセサリーの制作になりますが、回を重ねれば、形やデザイン、素材等の自由度も増します。自らが手がけた個性的な作品は旅のおみやげにも最適。
代々、飯山仏壇の金具職人を継ぐ鷲森敏男さんの工房「鷲森金具」では、彫金技術を学び、オリジナルのアクセサリー作りを体験できます。また、展示販売もしているので、体験する時間がない人も気軽に立ち寄り購入することができます。
手漉きの技で内山紙のオリジナルハガキを作成
楮(コウゾ)のみを原料として、洋紙パルプを混入しない手漉きの内山紙。製造工程でコウゾの繊維を取り出し雪にさらすことで、雪どけの際に発生するオゾンによる漂白効果が生じ、コウゾの皮が白くなります。手漉きは和紙の製造工程で最後の仕上げでもあり、最も肝心な作業。水に楮の繊維とトロロアオイからとった粘液「ネリ」を加えて混ぜ合わせた原料の溶液が入った「漉き舟(すきぶね)」に「簀桁(すけた)」を入れ、その上にコウゾの繊維を流し込むことで紙状にします。手漉き和紙体験工房ではオリジナルのハガキ作りが楽しめます。
- 1.流し漉き
楮の繊維とトロロアオイのネリを溶解した白液の中から紙の繊維を簀桁ですくい取ります。簀桁の端々までが均一の厚さになるように縦横に振りながら余分な水分を振り落とす作業を何回も繰り返します。
- 2.飾りを選択
予め用意されている花や葉っぱ、折り紙などでハガキを装飾できるので、好みのものを選びます。季節によって飾りは異なります。
- 3.装飾
選んだ飾りを簀桁の上に並べ、上からうすく漉いた紙をかぶせ、しばらく放置して自然圧搾します。
- 4.プレス
本来は重しを乗せますが、時間短縮のために掃除機で水分を落としてから簀桁を外し、布で挟んでプレスロールで圧力をかけ、さらに余分な水分を絞り出します。
- 5.プレス
通常の和紙製造の場合はこちらの大きな圧搾機でプレスします。
- 6.乾燥
アイロンで乾燥させます。本来の大きな和紙の場合は熱した鉄板を使用しますが、ハガキサイズであればアイロンのほうが早く仕上がるそうです。
- 7.できあがり
約30分でオリジナルの装飾を施した内山紙のハガキが完成。手漉きならではの風合いを生かし、旅先で拾った葉っぱを重ねたり、思い出のものをとじ込めたりと、色とりどりに楽しむのも良いかも。手作りのハガキに思い出を綴るのも趣深いでしょう。
350年もの歴史を持つ内山紙の体験工房。小学生や団体などさまざまな体験ツアーも受け入れており、楮から繊維を取り出すようすなどを見学することもできる。ハガキ制作は所要30分~1時間。